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血の味
沢木耕太郎
大学を出てまもない頃、広告の本に「コピーライティングの勉強には優れたエッセイを読むのが良い」と書かれていたので、梅田の旭屋書店で「第1回講談社エッセイ賞受賞」の帯を頼りに、平積みされていたエッセイ集「バーボンストリート」を買った。それが沢木耕太郎との初めての出会い。その独特のダンディズム、端正でリズム感のある文章、その後続けて読んだ数冊のノンフィクション作品の面白さにたちまちハマり、ほぼ全作を読みあさった。
「人の砂漠」を読んだ時、これだけの作品をこの人は自分と同じ20代で書いたのか、とショックを受けた。「若き実力者たち」を読んだ時、この人に描写してもらえる若い有名人たちがうらやましい、と感じた。「深夜特急」を読んだ時は、家庭を持つ前にこの本と出会っていれば、と心から思った。少なくとも、衝動的に一人旅に出る身勝手が許されたはずだから。
「中学三年の冬、私は人を殺した。ナイフで胸を一突きしたのだ。ナイフはBONEというアメリカ製のもので、刃渡りは8.7cmだった。」(第一章より)
自分自身、不安定で攻撃的な10代を経験しなかったせいか、こういった小説は正直苦手だ。何度か読み返したけれど、主人公が相手を刺さざるを得なかった必然性が伝わって来なかった。まあ衝動殺人なんてそんなものかも知れないし、読み手の力量
のせいかもしれないけどね。
やっぱり沢木耕太郎は、あくまでも取材対象の輝ける一瞬を鋭く切り取るノンフィクションライターであり続けてほしいな。
「そう、すべてにおいて後悔はしていない。もし私に後悔することがあるとすれば、私には私を殺してくれる私がいないということだけだ。」(第六章より)
(2004/1/18更新)
*沢木耕太郎のその他の本:
シネマと書店とスタジアム 無名 |