酒本舗
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二月の酒と本(六)

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最近飲んだ酒 近頃読んだ本
天野酒本醸造無濾過

天野酒(大阪)
本醸造無濾過酒原/仕込み8号直詰め
720ml/1100円


秀吉が愛した酒として知られる銘柄。元々は室町末期、大阪は河内長野の天野山金剛寺で造られていた僧坊酒で、江戸中期以降酒銘は途絶えていたが、昭和46年に地元の老舗蔵である西條合資会社が、金剛寺と地元の協力を得てこの由緒ある酒銘を復活させた。その直詰めの無濾過生酒を、尼崎の住宅街にある何でもないコンビニ(ヤマザキショップ)で見かけた時はかなりの驚きだった。飲み始めこそ無濾過原酒特有のほのかな甘味を感じるが、飲み進めるうちにコクのある辛口に。豊かな米の香りと濃醇な飲み口は、さすがに知る人ぞ知る銘酒である。ただそれにしても、近頃のコンビニは侮れない・・・。

海神−孫太郎漂流記

海神−孫太郎漂流記
安部龍太郎

「腰帯の間にはさんだ地図が正しいのなら、その方向に懐かしい九州があるはずである。
唐泊の海ぞいの家で、母が孫太郎と仁兵衛の帰りを待っているはずだった。
(父ちゃん、どげんすりゃよかね。どげんすりゃ帰らるっとね)
心細さに泣きたくなった。孫太郎はまだ二十歳である。これほど過酷な状況の中で皆をまとめていくには、経験も力も足りなかった。」
(「族長の首」より)

江戸時代半ば、突風のために乗っていた船が難破し、百日間の漂流の末に南国の島に漂着した水夫孫太郎が、島から島へと流転を続け、奴隷に身を落とすなどの苦難を乗り越えながら、一人前の男として成長していく物語。海洋冒険小説の大家である直木賞作家・白石一郎の作品を思い起こさせる、恋あり冒険ありサスペンスありの、いわゆる漂流譚の秀作だ。おまけに、あとがきを読むまでは全くのフィクションとばかり思っていたが、実は「南海紀聞」という実在の文献(孫太郎への聞き書きをまとめたもの)をベースに脚色を加えた歴史小説であった。へぇ〜、孫太郎ってホントにいたんだ...。
それにしても、「関ヶ原連判状」「風の如く 水の如く」をはじめ、この著者の作品はハズレが少ない。

「父は嵐の海に落ちたのではない。人間としての尊厳を守り通し、最期の瞬間まで自分や母のことを思いつづけていてくれたのだ。
このことに孫太郎は大きな感動を覚えた。
(父ちゃんは海神さまにならしたとかも知れん)
人の弱さを克服した者は神になる。神となって生きる者の支えとなる。自分が窮地におちいった時に何度も救いの声が聞こえたのは、父が海神となって守っていたからにちがいない。」
(「虹の旅人」より)


(2004/2/27更新)
*安部龍太郎のその他の本:
「神々に告ぐ」「生きて候」

 
天野酒吉祥

天野酒(大阪)
吟醸・吉祥
720ml/2100円


昨年2月にはSAKE王国で一般の参加を募り、大勢で天野酒の蔵見学に出向いた。その際秀吉が愛した頃の古式造りを再現した「僧坊酒」を試飲、紹興酒の如き色合いと超濃醇甘口のまったりした味わいに驚かされたことがある。
さてこの「吉祥」はいわゆる味吟醸タイプ。精米歩合50%以下なのでスペック的には大吟醸である。酸味が少ないせいか+4にしては意外に甘い飲み口であるが、豊かな米の風味としっかりとしたコクがあり、それでいてスッキリとしたキレも感じられる点がただ者ではない。肴なしで飲んでも旨い酒。

   

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