酒本舗
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三月の酒と本(四)

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最近飲んだ酒 近頃読んだ本
山形正宗

山形正宗(山形)
純米無濾過原酒/山田錦
1800ml/2800円


「dancyu」の日本酒特集でもおなじみ神戸東灘「酒仙堂フジモリ」で、店主に奨められ即購入。仕込水には立谷川の伏流水を使用、全品が昔ながらの木槽で、モロミの入った酒袋を積み重ね丁寧に搾っている。精米55%の吟醸仕様という事もあってか上品な上立香を持ち、口に含むとしっかりとした旨味が広がる。それでいて後味はキレが良く、料理にも合わせやすい。信頼できる行きつけの酒屋さんがあると、こうした出会いがあるからありがたい。
ちなみに五代目を継ぐ若き蔵元は人脈にも恵まれ、「上喜元」の名人佐藤杜氏や「十四代」の高木杜氏からも技術を学んでいるとか。この先注目の銘柄。

沖田総司

沖田総司(上)(下)
早乙女貢

「総司は走っていた。風が耳もとで鳴った。足もとから、雪が舞いあがり、ときどき、草鞋の足が滑った。
走りながら、かれは、うしろをふりかえった。罵り声が追ってくる。
『執こいなあ』
右手にさげた刀が、路傍の草を薙いだ。その刃はまだ血を吸ったことがない。」
(「青年」より)

幕末の英雄で最も女性の人気を集めているのがこの沖田総司。写真が現存しないため、実際に美男だったかは定かでない。が、“若くして労咳に倒れた悲運の天才剣士”ということで、とりあえず美男でなきゃ絵にならないだろう。また様々な作家が新選組に多彩な光の当て方をしているが、本書でも描かれている通りの無骨で一本気な近藤、冷徹無情な土方、純情多感で明るい沖田という構図は、司馬遼太郎の「新選組血風録」等ほぼ誰もが踏襲している。血なまぐさい新選組の歴史の、一服の清涼剤といった感じか。
さて、会津の血を引く作者の早乙女貢は、維新史を敗者側から描く独自の作風なため、いわゆる維新の英傑は片っ端から一刀両断、勝海舟も山岡鉄舟も龍馬も晋作も皆ボロクソである。20代で初めてこの人の作品を読んだ時はさすがに(何やねん、この作者は!)と反発したが、明治維新を全く別の角度から見せられるのは結構新鮮な体験でもあった。こういう作家がいないと、会津藩の人たちも浮かばれないよなあ・・・と今は素直に思う。

「総司は抜刀した。黒猫は、それでも凝っとしていた。総司は蹌踉と近づいた。猫の一間ほど手まえまでいったが、刀をふりあげる気力もなく、よろよろと、その場に片膝をついた。
『斬れない、おれには斬れない』
総司の双眸には、絶望か悔恨か涙がいっぱいに盛り上がっていた。
おりえは総司の死に目にあえなかった。精のつくものを食べさせなければ、と、自分の着替えを入質しにいった留守であった。」
(「落日」より)


(2004/3/17更新)

 
久保田万寿

久保田万寿(新潟)
純米大吟醸
1800ml/7800円


近頃日本酒全体のレベルが上がったせいか、久保田、八海山越乃寒梅辺りの存在感が多少薄れて来た様な気がしないでもない。そのくせネット通販の世界では、ど厚かましくも一升瓶15,000円前後で、おまけに他の酒と抱き合わせで売っていたりするので、悪徳酒販店を儲けさせる位なら他にも旨い酒はたくさんあるよ〜とつい教えてあげたくなる。
但し久保田万寿自体は、相変わらず安定感のあるキレの良い上質な酒なので、(今回の私の様に)一杯1000円前後で飲める良心的な居酒屋で、活きのいい刺身なんかでちびちび飲るのもまた善き哉。でも三合目以降は舌もマヒして来たので千寿でも十分か・・・。(→久保田碧寿)

   

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