酒本舗
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三月の酒と本(六)

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最近飲んだ酒 近頃読んだ本
本嘉納正宗

本嘉納正宗(兵庫)
本醸造
720ml/1000円


菊正宗が自社ホームページ上だけで紹介し、全国の限定された酒販店にのみ流している銘柄。といっても特段変わった酒ではない。どちらかと言えば“ああ、これが灘本流の辛口・男酒か”と思わせる、オーソドックスな本醸造である。酒米には兵庫県美嚢郡吉川町・特A地区で契約栽培した山田錦を100%使用、生もとならではの乳酸の風味がほのかに感じられるが、色合い的にも透明度は高く、酸味がさほど強くないためすっきりとして飲みやすい。また燗にすると一層キレがよくなり、飲み飽きせずにスイスイいけてしまう。味わいはしっかりしているが飲み口がキレイでクセがないため、食中酒として守備範囲は広そうだ。

新選組血風録

新選組血風録
司馬遼太郎

「近藤はその頭上へ二ノ太刀をふりおろし、頭をたたき割った。刀は、うそのように相手の脳骨へ吸いこまれた。
(斬れる。さすがは虎徹だ。・・・・・)
ほとんど、手ごたえもない。しかも竹刀よりもはるかにあつかいやすく、撃ちのすさまじさは、胴田貫に似ている。
刀は、持ち手によって魔力をおびるものだ。
斬れる、と信じたとき、近藤はおそらく実力以上の使い手になっていた。」
(「虎徹」より)

「司馬史観」という言葉がある。これは単に“司馬遼太郎の歴史観”という言葉以上に、司馬遼太郎がどう描いたかによって、歴史上の人物や事件に対する国民の評価が大きく左右されている“現実”を炙り出す言葉でもある。その一例が「竜馬がゆく」であり、「燃えよ剣」であろう。司馬の筆によって、龍馬は新しい時代の扉を開いた天衣無縫のヒーローとなり、土方は滅びゆく時代に殉じた哀しき英雄となり得た。同時に新選組も、維新史における安住の地を得たのである。
さて新選組を題材にした15の短編集という体裁を取った本書では、有名無名の隊士達の生き様が、小説的巧緻に彩られながらいきいきと描かれている。しかし全編通して読み進むにつれ、個々の楽器の音色が重なり合い、共に響き合いながら複雑な交響楽が奏でられていくように、やがて一本の骨太な“新選組史”が脳裏に編み上げられていくかのようである。
なおついでながら、大島渚監督の「御法度」は、本書中の「前髪の惣三郎」が原作となっている。

「あらためて加納惣三郎の顔をみた近藤と土方は、息をのむ思いだった。男で、これほどの美貌があるだろうか。
まだ前髪を残している。
眼が切れのながい単のまぶたで、凄いような色気がある。色が白く唇の形がうつくしい。
『加納君は、おいくつになられる』
『はい。十八になります』」
(「前髪の惣三郎」より)


(2004/3/27更新)
*司馬遼太郎のその他の本:
大盗禅師/城をとる話
宮本武蔵
侍はこわい
以下、無用のことながら

 
凡愚

凡愚(大阪)
大吟醸山田錦
720ml/2500円


前回の龍泉同様茨木・中尾酒造の主銘柄の一つ。“当たり前”という酒銘のコンセプト通り華やかさこそないが、まろやかで切れ味の良い味吟醸タイプ。ぬる燗にしても旨味が立ってなかなか美味しい。
さてこの蔵の酒造りには、杜氏一人で造っているという以外にもう一つ大きな特徴がある。それは真夜中造り。かつては、最も気温が下がる夜半に作業するのはごく当たり前の事だったが、空調や温度管理技術が発達した今日では少数派だろう。「真夜中造りを『パフォーマンスや』と陰口たたく人もいますが、酒造りにとってこれが一番エエからやってるんです」と中尾専務。という訳で醸造体験中は、私もAM1〜5時まで作業→3時間仮眠→朝食→作業→昼食→作業→夕食→3時間仮眠→AM1時から作業というサイクルで酒造りに携わった。

   

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