酒本舗
BACK

四月の酒と本(四)

NEXT

最近飲んだ酒 近頃読んだ本
蔵の恵

高砂・蔵の恵(静岡)
純米生あらばしり
720ml/1155円


蔵元の富士高砂酒造は、その名の通り富士山の裾野にあり、仕込水に富士山の伏流水を使っている。あらばしり(荒走り)とは、醪(もろみ)を搾った時一番最初にほとばしって出て来るお酒のこと。栓を開けた当初はわずかに炭酸ガスが残っていたせいか、ほんの少しピリピリとフレッシュな口当たり。口に含むと豊かな米の風味と香りが広がる。度数が17.5%と原酒にしてはやや低めなので、喉越しも比較的軽やかではある。三日に分けて飲んでみたが、日を置くにつれて明らかにまろやかさが増し、飲みやすくなった感じがした。

忍び寄る牙

忍び寄る牙
ロバート・B・パーカー著/菊池 光訳

「いちばん楽しみを味わえるのは酔う前だ。最初に一杯を飲み、まだあとがあるとはっきり判っている時は、今の自分の生活に感謝の念を抱く。二杯目を飲み終わった後は魔術が消えて、やがて常用癖になる。」(第14章より)

スペンサーシリーズでおなじみロバート・B・パーカーが生んだ新シリーズの第2作。全くの個人的想像だが、私立探偵というアウトローでありながら、己の規範に厳しく、恋人スーザン以外とは頑なに関係を持たず、肉体を鍛えるのが趣味のマッチョなスペンサーを描き続けるのに、パーカー自身が少々息苦しさを覚えているのではないだろうか。その点本シリーズの主人公ジェッシイは、警察署長という社会的要職にありながら元来アルコール依存症で、別れた妻ジェシーに未練たっぷりで家の前で見張ったり、それでいて周りにいる複数の女性とあっさり関係を持ってしまう様な、私生活面では少々ユルめの男。まさにスペンサーのアンチテーゼ的存在と言える。
但しいざ職務を果たす段になると、スペンサー同様絶対に妥協はせず、信念と誇りを持って事に当たるタフガイとなる。パーカーの作風に惹かれる読者の嗜好は、この点では決して裏切られることはない。
そしてスペンサーシリーズにおけるホークのように、凄みのある悪党クロウがハードボイルドないい味を出している。ぜひ次作以降でも登場してほしいものだ。

「おれが立派にこなせる職は一つしかなくて、これがそれだ。この仕事をやっていなかったら、おれはいったい何なんだ?酒の問題を抱えていて、結婚をまともに解決できない男に過ぎない」(第37章より)

(2004/4/18更新)

 
歓びの泉

歓びの泉(岡山)
純米吟醸朝日袋吊り・おりからみ
720ml/1370円


木綿の袋にもろみを入れ、吊して袋からにじみ出てきた新酒をそのまま瓶詰めしたお酒。瓶の底には1cm程の滓が溜まっている。栓を開けるとプシュッと小気味の良い音がして、きき猪口に入れるとプツプツと炭酸ガスが泡立つ。甘酸っぱい上立ち香は乳酸菌入り炭酸飲料を思わせ、口に含むと心地よい刺激が口中に広がる。ただ味わいは意外に辛口で、程よい酸味も感じられ後味は引き締まった心地良さがある。特にこれからの温かい季節にはもってこいの、清涼感のある旨い酒。

   

TOP HOMEページへ