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忍び寄る牙
ロバート・B・パーカー著/菊池 光訳
「いちばん楽しみを味わえるのは酔う前だ。最初に一杯を飲み、まだあとがあるとはっきり判っている時は、今の自分の生活に感謝の念を抱く。二杯目を飲み終わった後は魔術が消えて、やがて常用癖になる。」(第14章より)
スペンサーシリーズでおなじみロバート・B・パーカーが生んだ新シリーズの第2作。全くの個人的想像だが、私立探偵というアウトローでありながら、己の規範に厳しく、恋人スーザン以外とは頑なに関係を持たず、肉体を鍛えるのが趣味のマッチョなスペンサーを描き続けるのに、パーカー自身が少々息苦しさを覚えているのではないだろうか。その点本シリーズの主人公ジェッシイは、警察署長という社会的要職にありながら元来アルコール依存症で、別れた妻ジェシーに未練たっぷりで家の前で見張ったり、それでいて周りにいる複数の女性とあっさり関係を持ってしまう様な、私生活面では少々ユルめの男。まさにスペンサーのアンチテーゼ的存在と言える。
但しいざ職務を果たす段になると、スペンサー同様絶対に妥協はせず、信念と誇りを持って事に当たるタフガイとなる。パーカーの作風に惹かれる読者の嗜好は、この点では決して裏切られることはない。
そしてスペンサーシリーズにおけるホークのように、凄みのある悪党クロウがハードボイルドないい味を出している。ぜひ次作以降でも登場してほしいものだ。
「おれが立派にこなせる職は一つしかなくて、これがそれだ。この仕事をやっていなかったら、おれはいったい何なんだ?酒の問題を抱えていて、結婚をまともに解決できない男に過ぎない」(第37章より)
(2004/4/18更新)
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