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卒業
重松清
「何月だったっけ、おまえが学校に戻ったの」
「十月。運動会のちょっとあと」
「三ヶ月以上かかったんだよな」
「うん・・・・・でも、三ヶ月かかったおかげで、うち、一生ぶんの『好き』をお母ちゃんから貰うたけん。シャワーみたいに、好き好き好き好き好き・・・・・毎日毎日、言うてくれたんやもん。うち幸せ者やと思う。世界中で、こんなに自分の親から『好き』を言うてもろうた子、絶対におらんもん。うち、世界一幸せな女の子なんよ」(「まゆみのマーチ」より)
近頃娘が重松清にはまっていると云うので、試しに借りてみたが、プロフィールを見ると私とほぼ同年代、青年期にくぐって来た世相や文化が共通しているせいか、すんなりとその世界観に溶け込めた。
中身は、親の死と家族の絆をテーマにした4つの短編集。昨年家内が母親を亡くし、私の母親も脳手術で生死の境を彷徨ったせいか、細かい描写に妙にリアリティを感じてしまい、つい涙腺が緩む。娘も泣いたらしいが、たぶん私とはその受け止め方は違うだろう。
「霊柩車の扉が開いた。棺がレールに乗せられた、そのときだった。
『先生!』
野太い声が、人垣の後ろのほうから聞こえた。顔はわからない。声に聞き覚えもない。だが、それは確かに父の教え子の声だった。
その呼びかけが引き金になったように、誰からともなく『あおげば尊し』を歌いだした。」(「あおげば尊し」より)
(2004/4/29更新)
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