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大いなる眠り
レイモンド・チャンドラー著/双葉十三郎訳
「急ぐことはないさ。これは前からきまっていたことなんだ。ラジオのプロみたいに一秒間の狂いもなくけいこしてあったことなんだ。急がないでいい。キスしてくれ。銀髪(シルヴァ・ウイグ)」
私の口の舌にある彼女の顔は氷みたいだった。両手をあげ、私の頭を抱くと、くちびるに、彼女は接吻した。くちびるも、氷みたいだった。(第28章より)
「長いお別れ」に続くチャンドラーの再読であるが、こちらは1939年に書かれた記念すべき長編第一作。作中でマーロウはまだ三十三歳と若い。そのせいか、口にするセリフも心なしか含蓄が少なく、ストーリー自体もインパクトが少ない。仮に今、何の予備知識もなくこの作品で初めてチャンドラーと出会ったとすれば、以後の作品に手が伸びなかったかもしれないなあ。
ちなみに本作はハンフリー・ボガート主演で映画化されているが、邦題はなぜか「三つ数えろ」(このタイトルはあんまりでしょう・・・)。機会があれば観てみたいが、ストーリーは原作とかなり違うらしい。
死んだあと、どこへ埋められようと、当人の知ったことではない。きたない溜桶の中だろうと、高い丘の上の大理石の塔の中だろうと、当人は気づかない。君は死んでしまった。大いなる眠りをむさぼっているのだ。そんなことでわずらわされるわけがない。油でも水でも、君にとっては空気や風と同じことだ。君はただ、大いなる眠りをむさぼるのだ。(第32章より)
(2004/11/15更新)
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