酒本舗
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六月の酒と本(三)

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米鶴

米鶴(山形)
純米生酒
720ml/1050円


中津の立呑酒屋「おおにし」店主おすすめの純米生酒。おでんを肴に何種類か試飲した後、一番印象に残ったので自宅用に購入した。日本名門酒会限定商品で、原料米は山形産の「はえぬき」で、酵母には高香気性の明利・M310を使用。精米歩合65%ながら、吟醸酒でも十分通る程のフルーティーな果実香が特徴である。飲み口もふくらみがあって味わい豊か。これで税込み1000円はかなりお買い得である。
ちなみに蔵元は元禄年間から続いている老舗で、早期から吟醸酒を手がけた蔵として知られている。

纐纈城綺譚

 

纐纈城綺譚
田中芳樹著

逃げよ、と指文字は円仁に告げた。ここにいれば殺される。舌と両肢が麻痺して動かなくなる毒物を服まされ、生きながら血を搾られ、城の者どもはそれで布を染めるのだ。ここは悪鬼の棲む城、名を纐纈城という・・・・・。(第一章「秋風ノ巻」より)

中国には、「武侠小説」というジャンルがある。武術に秀でたスーパーヒーローが、様々な苦難に遭いながらも優れた体技で己の生き様を切り拓いていく娯楽文学で、古くから有名な作品としては「水滸伝」、現代の日本で言えば隆慶一郎の「一夢庵風流記」や「鬼麿斬人剣」、あるいは山田風太郎の奇想天外な忍者小説などがそれに通じるものがある。「ドラゴンボール」や「北斗の拳」も、ある意味では発展形(武侠マンガ?!)と言えるかも知れない。とにかく理屈抜きでストーリーの楽しさを味わうべき、エンターテインメントの極北である。
さて本書「纐纈城綺譚」は、日本人作家が手がけた武侠小説。「隋唐演義」「岳飛伝」「紅塵」などの編訳、創作で知られる田中芳樹の手になるもので、ストーリーは特に見るべきものはないが、中国の史書や資料を細かく読み込み、そこに登場する(日本人には)無名の実在の人物を主人公に据えたところに、作者の良心とこだわりを感じる。

「人の世にはさまざまな矛盾や欺瞞がございます。それを知り、悩む者ほど、詭弁によって動揺いたします。二十郎君は、どうお答えになりましたか」
「無辜の民を殺すのは悪だ、といった」
王式は静かにうなずいた。
「思うに、それこそが人の世における無上の真理であろうと心得ます。・・・」
(第五章「白霧ノ巻」より)

(2005/6/12更新)

 
       

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