| 日輪の果て
ロバート・ゴダード著/成川裕子訳
「じゃあ、誰が電話したんだ?」
「わからない。そのことは、ディヴィッドとわたししか知らないのよ、ハリー。問題はそこなの」
「知らないっていうのは、ぼくがディヴィッドの父親だってことをか?」
長い沈黙があったが、ハリーは断固として口を開かなかった。やがて、アイリスが言った。「そう」 (上巻/第4章より)
「蒼穹のかなたへ」の主人公、くたびれた中年男のハリー・バーネットを再度主人公に据えた作品。といっても続編ではなく、作品自体に何のつながりもないし、前作を読もうが読むまいが作品鑑賞には全く影響はない。
そして残念ながら、面白さや作品の質、レベルは前作より格段に落ちる。コダードならではの重厚で、精緻で、凝りに凝ったいつもの作風とは違い、設定もプロットも結論も、全てにおいて「・・・・」といった感じ。同じ作家の、同じ主人公を据えた作品とは思えない程の落差を感じた。期待が大きい分だけ、外した時の落胆は大きい。
ハリーはそこに長いこと坐り、ビールをすすり、煙草を吸いながら、不毛に羅列された文字を見つめていた。これらは何を意味するのだろう。いったい、結局はどういうことになるのだろう。ハリーは煙草の煙を見、暗闇を見、まわりのほのぐらい明かりを見た。窓に映った自分の顔を、背後のバーで動いている人々を見た。見て、見て、なおも見たが、何も見えてはこなかった。(下巻/第58章より)
(2005/8/1更新)
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