| 社会心理学入門
我妻洋
経験を積んだ店員は、初めから自分の意見など口にださない。まず客にいくつかの商品を眺めさせて好みや意見を言わせる。「これなんかちょっといいわね」と相手が言ったらただちに同意する。客の心の中で彼への評価はそのソファと同じ高さに上昇する。「お客さまはご趣味がヨーロッパ系で・・・・・」などとつけ足せば、さらに上昇まちがいない。(第二章「場の理論-III適合性の理論」より)
かれこれ17、8年前のことである。当時勤めていた会社の先輩と一緒に、西梅田の地下街にある焼鳥屋で飲んでいたら、かつてA新聞で一コマ漫画を描いていたという、高名な漫画家の先生と意気投合した。会話の中味はほとんど覚えていないが、ただ一言今でも強く印象に残った言葉がある。
「良い広告が作りたければ、心理学を勉強しなさい。」
当時はあまりピンと来なかったが、今ではかなり肯ける言葉だ。特にキャッチコピーの制作においては、「ある状況に置かれた時、人間はどんな気持になるのか」を想像することで、答えに近づけることが少なくない。頭でこしらえたキレイなだけの表現よりも、普遍的な人間の心理を汲んだリアルな言葉を見つけ出す方が、結局は多くの人の共感を呼ぶからだろう。
日本語の会話においては・・・(中略)・・・自分も相手も私やあなたに抽象化されず、父母・兄弟・おじおば・社長・先生・運転手さんなどと、様々な具体的な身分を占める存在にとどまることが多い。・・・(中略)・・・日本人の自己概念が当人の社会的身分と密接に結びついており、日本人が自分の役割を離れて自分を考えにくいという傾向は、こうしたことばの性格からもうかがわれるのである。(第五章「役割理論-IV日本人の自己と役割」より)
(2005/9/19更新) |