| 哲学入門
バートランド・ラッセル著/高村夏輝訳
この章で問題にしなければならないのは、どういう意味であれ、物質なるものがあるかどうかである。ある内在的な本性を持ったテーブルが存在し、見ていないときにも存在し続けているのか。それとも想像の産物にすぎず、長い夢の中で見ている夢のテーブルでしかないのか。これはとてつもなく重要な問題である(第2章「物質は存在するか」より)
物質が“本当に”眼前に存在しているかどうか、という問題は、哲学の世界では“とてつもなく”重要なテーマである、らしい。そしてバーチャルにモノの存在を再現する技術が発達しつつある今、あるいはそうした技術がますます精巧になるであろう未来において、この問題はテツガクしない一般人にとっても結構切実な問題となるかも知れない。なぜなら、五感の全てが「目の前に在るよ」と明確に知覚しても、実際は単なるバーチャルな存在であった、という事例が今後山ほど出現(体験)するかも知れないからだ。そしてそのバーチャルなモノが“リアル”なモノ同様に機能し、我々の心を満足させ得るのであれば、なおさら何が“本当の存在”で、何がそうでないかなど、とりあえず“どーでもよい”ってことになるかも知れないのだ。
問いに対して明確な解答を得るために哲学を学ぶのではない。なぜなら、明確な解答は概して、それが正しいということを知りえないようなものだからである。むしろ問いそのものを目的として哲学を学ぶのである。なぜならそれらの問いは、「何がありうるか」に関する考えをおしひろげ、知的想像力を豊かにし、多面的な考察から心を閉ざしてしまう独断的な確信を減らすからだ。(第15章「哲学の価値」より)
(2005/10/27更新) |