| 哲学の教科書
中島義道
つまり、哲学の大きな特徴は、足元にころがっている単純なことーーそのテーマはおのずから決まってくるのですがーーに対して、誰でもどの時代でも真剣に考え抜けば同じ疑問に行き着くという信念のもとに、徹底的な懐疑を遂行することです。(第2章「哲学とは何でないか」より)
「哲学とは何か?」という問いにはよくお目にかかるが、逆に「哲学とは何でないか」という問いを軸に論旨を展開している点が本書のユニークなところ。思想ではなく、文学、芸術でもなく、もちろん人生論でも宗教でも、ましてや科学でもない、という執拗な否定の論証を通じて、哲学というものの輪郭を浮かび上がらせようとしている。
そして著者が定義する「哲学的態度」とは、自我・時間・他者・存在・意志・自由などの問題に真っ正面から挑み、躓き、悩み抜くことである。そのため真に「哲学的」であろうとすれば、数学や芸術の世界で求められるのと同じ様な、極めて特殊な才能が必要であり、見方を変えれば特殊な「病気」にかかるのと同じであると述べている。
いかなる高僧も芸術家もそのまま哲学者でないことは、この言語への態度にあるように思います。例えば「死」を直観するのではなく、それを論理的に精緻に語り尽くすところに哲学の真骨頂はあります。(第5章「哲学者とはどのような種族か」より)
(2005/11/3更新) |