酒本舗

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十一月の酒と本(二)

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玉乃光

玉乃光(京都)
純米吟醸酒魂
720ml/1019円


大阪梅田のOSホテルの地下に「玉乃光」の直営店がある。そこで紙パック入りの玉乃光純米吟醸を飲みながら、生まれて初めてあん肝を食べたのがかれこれ20年前。「こ、これこそ、日本酒のために生まれたような肴だ!」と感動したのを、昨日のことのように覚えている。それ以来酒場であん肝を見つけると、注文せずにはいられない。
そしてこの純米吟醸は、天然の酸味と旨味のバランスがとれたスッキリ系。玉乃光の中ではまさに定番中の定番とも言える酒である。

異邦人

 

異邦人
カミュ著/窪田啓作訳

私は汗と太陽とをふり払った。昼間の均衡と、私がそこに幸福を感じていた、その浜辺の異常な沈黙とを、うちこわしたことを悟った。そこで、私はこの身動きしない体に、なお四たび撃ちこんだ。弾丸は深くくい入ったが、そうとも見えなかった。それは私が不幸のとびらをたたいた、四つの短い音にも似ていた。(第一部より)

要約すれば、「本心を偽らないアウトサイダー的な主人公ムルソーが、自分に正直過ぎるが故に、犯した罪以上の重罪犯として欺瞞的な社会から断罪され、“異邦人”として不条理に葬られてゆく」物語。
その正直さは、例えば女友達マリイの「自分を愛しているか」という問いかけに。「それには何の意味もないが、恐らくは君を愛してはいないだろう」と、ごく自然に答えるところに象徴される。大抵の男は(同じ思いであっても)多分そうは答えない。「もちろん愛しているさ」とか何とか、女が満足する答を口にする方が賢明だと知っているから。
それにしても今の世の中。「太陽のせい」に近い些細なきっかけで自制心を失う(=キレる)人間が増えている。もし舞台が現代ならこの小説は成立しなかっただろうし、「太陽のせい」という殺人動機のフレーズも、文学史に残る程のインパクトを持ち得なかったに違いない。

そのとき、なぜか知らないが、私の内部で何かが裂けた。私は大口をあけてどなり出し、彼をののしり、祈りなどするなといい、消えてなくならなければ焼き殺すぞ、といった。私は法衣の襟くびをつかんだ。喜びと怒りのいり混じったおののきとともに、彼に向かって心の底をぶちまけた。(第二部より)

(2005/11/9更新)

 
       

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