酒本舗

BACK

三月の酒と本(五)

NEXT

最近飲んだ酒 近頃読んだ本
備前幻

備前幻(岡山)
純米吟醸
720ml/1365円


前回に続くモンドセレクションつながりで、スーパー「マルナカ」の酒売場で見かけ思わず購入。契約農家で栽培した備前雄町米100%を原料とし、仕込み水には日本名水百選・雄町の冷泉を使用。ボトル前面に貼られたこれ見よがしの大きな金ラベルがやや品のない印象を与えるものの、飲んでみると吟醸香は抑えめではあるものの、軽快な飲み口の中にしっかりとコクと味わいもあるという、バランスの良い辛口タイプ。食中酒には最適だ。
蔵元の室町酒造は元禄元年(1687年)創業の老舗で、全国新酒鑑評会の金賞常連蔵でもある。主銘柄は「櫻室町」。

龍馬(二)脱藩篇

 

龍馬(二)脱藩篇
津本陽

--この座敷で寝るがは、二度とないかもしれん--
行燈の微光のなかで、赤い砂壁をみつめながら、龍馬は亡き両親と祖母、お琴の俤に語りかけた。
「俺は明日の朝には出ていくぜよ。気儘者じゃき、高知にはおれん。どこぞで野垂れ死にするかもしれんが、そのときはお前さんらあに会えるろう」
(「陽は蒼く」より)


土佐勤王党への加盟、脱藩、勝麟太郎(海舟)への弟子入りなど、文久元年から2年(1861-2)の末にかけて、時勢に大きく開眼して行く龍馬を描く第二巻。特に勝との邂逅なくして後半生の龍馬の活躍はなく、まさに“日本史を動かした出会い”と言っても過言ではない。ちなみにこの出会いの場面については、晩年の海舟が『氷川清話』で「坂本は己を殺しに来た奴だが・・・」と語っているが、龍馬にはそうした物騒な意図はなく、勝一流の法螺か記憶違いというのが今日の定説であり、本書もその立場で二人の出会いを描いている。
なお興味深いのは、通常の龍馬の年譜では文久2年12月5日に当時の政治総裁・松平春嶽を龍馬が訪ね、そこで得た紹介状を持って後日勝を訪問したとされているが、本書では咸臨丸で勝と共に渡米したジョン万次郎の口利きで、既に8月半ばには勝に弟子入りし、その後勝の添え状を持って12月5日に松平春嶽を訪問したと描いていること。確かに一介の浪人がいきなり時の政治総裁を訪ねるより、本書の流れの方が信憑性があるように思えるが、事実や如何に。

麟太郎は独特な威風をただよわす外見を備えている龍馬を見て、遠い土佐の激しい陽が照りわたる海を思い浮かべた。龍馬の顔は鍋墨を塗ったように黒く陽灼けしている。
平伏する二人に麟太郎は声をかける。
「そんなところでかしこまってねえでここへきな」
(「追風」より)


(2006/3/26更新)

 
       

TOP HOMEページへ