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七本槍(滋賀)
純米生原酒中取り
1800ml/2940円
北大路魯山人が愛飲したと言われる北近江の銘酒。蔵元の富田酒造は天文年間(16世紀半ば)創業の老舗で、蔵には魯山人の手による扁額が掲げられているとのこと。「七本槍」の酒銘は無論近くに賤ヶ岳があるからだろう。酒米は地元契約栽培の玉栄を60%精米し、「金沢酵母」とも呼ばれる14号酵母を使用している。
米の風味が豊かで味わいにふくらみとコクがあり、ほのかな甘味を感じる濃醇旨口タイプ。三宮の「さくら亭」にて。肴は胡麻豆腐と稚鮎の天ぷら。レモンと塩で揚げたてをサクサクと。
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無名
沢木耕太郎
父は温燗の日本酒を頼むと、当然のように二本と言った。私の眼の前にも徳利と猪口が出てきた。父は最初の一杯はついでくれたが、あとは自分で好きなようにしろというように放っておかれた。だから、私も父と同じように手酌で酒を飲んだ。(第四章「酒徒」より)
本と酒を愛した“無名の”父親の人生を述懐しつつ、最後の日々を静かに描いた私小説的ノンフィクション。父親と自分との関係や、父親の生き様から受けた影響を振り返ることで、結果的に沢木自身の生き方・考え方が吐露されているのが興味深い。
厖大な知識を持つ存在として“畏怖”する反面、純粋で世渡り下手な父親を“守るべき対象”と、沢木は感じていた。こうした矛盾した心理を抱え、反抗期を経験することもなく、いつしか他人行儀な言葉を遣う変則的な父子関係になっていった。そしてこの絶対的矛盾の中にいた健気な少年時代の自分を“救出”するために生まれたのが、小説「血の味」だったという。同書の“父親を刺す”という衝撃の結末は意図したものではなく、書き進めるうちに図らずもそこにたどり着いたらしいが、沢木にとってそれは必然であり、無意識かつ唯一の“父親への反抗”だったのである。
目的地はどこでもよかった。アジアから陸路でヨーロッパを目指すというコースを採ったのは、ほとんど偶然にすぎなかった。
私がヨーロッパに向けての旅に出ることを知った父は、ひとつの句を作った。それが、句会の宗匠に取り上げられた「巴里」の句だった。
薔薇の香やつひに巴里は見ざるべし
(第五章「竜舌蘭」より)
(2006/6/15更新)
*沢木耕太郎のその他の本:
血の味 シネマと書店とスタジアム
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