酒本舗

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六月の酒と本(六)

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三千盛悠醸

三千盛悠醸(岐阜)
純米吟醸
720ml/1845円


岐阜県多治見市にある三千盛謹醸は、安政年間(1780年頃)創業の老舗蔵。辛口を超越した“水口”の酒(水の様に抵抗なく飲めて、しかも日本酒独特の旨さがあり酔いざめのいい酒)をモットーとしている。
この「悠醸」は美山錦を45%まで磨いた大吟醸仕様で、日本酒度+11、酸度1.8と結構な辛口タイプだ。味わいはシンプルでキレが良く、それでいてまったりした飲み応えのある酒。

危機の宰相

危機の宰相
沢木耕太郎

戦後三十年を通じて、この二つの言葉ほど社会全体に強い影響を与えたものはない。一九六〇年代はアンポに明け、バイゾーに暮れた。一九六〇年代とは、「アンポ反対」を叫んだ人びとがやがて「所得倍増」の幻想にからめとられ、流れに巻き込まれていった時代といえる。その意味では、「所得倍増」こそ戦後最大のコピーライティングだったといえるかもしれない。(第二章「戦後最大のコピー」より)

「一瞬の夏」の様なスポーツノンフィクションも、「チェーンスモーキング」の様なエッセイも、もちろん「深夜特急」の様な紀行文もそれぞれ捨てがたいが、硬質な社会派の題材であっても読み手をそらさない点で、沢木耕太郎の右に出る者はいない。他の書き手だと読み通すのが苦痛になりそうなテーマでも、ロマンティシズムが程良く香る著者独自の文体と構成の分かりやすさで、ついつい最後まで読まされてしまう。今回も池田勇人や下村治については名前しか知らず、田村敏雄に至っては全くの初耳だったが、一冊読み終えた今となっては、“グッドルーザー”である三人の生き様がしっかりと心に刻まれてしまった。
それにしても「所得倍増」とは、何とシンプルで力強く、人びとの心に希望を与える言葉だろう。そしてそもそもこの言葉を「戦後最大のコピー」と見なした視点が、私にとって目から鱗であった。

だが、池田、下村、田村という三人の人生の軌跡が、吸い込まれるように一点で交わったのは、ある意味で彼らが共に「敗者」だったからである。・・・(中略)・・・この三人が共有することになる、日本経済への底抜けのオプティミズムは、彼らが共に一度は自分自身の死を間近に見たことがあるということを考えるとき、ある種の「凄味」すら感じさせられる。(第三章「第三のブレーン」より)

(2007/6/23更新)

 
 
   

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