| ロング・グッドバイ
レイモンド・チャンドラー著/村上春樹訳
「アルコールは恋に似ている」と彼は言った。「最初のキスは魔法のようだ。二度目で心を通わせる。そして三度目は決まりごとになる。あとはただ相手の服を脱がせるだけだ」
「どこがいけない?」と私は尋ねてみた。(第4章より)
清水俊二訳の「長いお別れ」を過去3度読んだことがあるが、今回の村上春樹バージョン、そして巻末の43ページにもわたる長大な「あとがき」を読んで、初めてこの作品の文学的な味わい方を知ることができたような気がする。「グレート・ギャツビー」との類似点等、素人には思いもよらぬ読み方があるもんだと感心した。プロットを既に知っている人であれば、まず先にこのあとがきをしっかり読み込んだ後に、「マーロウという一対の目を通して眺める世界」を一文一文賞翫することを勧めたい。
ただ、現代に合わせた新訳の割に、清水氏の訳よりも古めかしい表現が随所に用いられているのが気になったのと、1940年代のペーパーバックの表紙を現代風にアレンジしたというチップ・キッドの装丁も、狙い過ぎた揚げ句大幅に外したんじゃないの〜と個人的には思う。
彼は手を伸ばして、サングラスを外した。瞳の色を変えることまではできない。
「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」と彼は言った。(第52章より)
(2007/8/11更新)
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