| 背信・冷たい銃声
ロバート・B・パーカー著/菊池光訳
「いずれにしても、彼は見えない」私が言った。「長髪の尾行を終えるまで、彼を見ることはないと思う」
「それで、彼があそこにいると、どうして判るの?」
「そこにいる、と彼が言った」
「でも・・・・・」
「ホークは、そうでないことは絶対に言わない」ヴィニイが言った。(「背信」第50章より)
久々のスペンサーシリーズ。31作目「背信」と32作目「冷たい銃声」を立て続けに読んだ。偉大なるマンネリズムに少しでも刺激を与えるべく、「背信」では初めて経済犯罪をテーマに選び、「冷たい銃声」では不死身の相棒ホークが背中から撃たれ瀕死の重傷を負う、という設定から物語をスタートさせた。かつて24作目の「悪党」(1997)では、物語の後半でスペンサー自らが撃たれ、リハビリから復帰に至る過程までを克明に描いて見せたが、その時以来の思い切った設定である。そして殺害された依頼人の遺児のため、自らの誇りと生き方を守るため、いつもよりほんの少し饒舌なホークが、スペンサーの手を借りながら冷静に復讐を遂げていく。まさにホークファンのための待望の一冊、といった感じ。
「おれは背中を撃たれるようなことがあってはならないんだ」
「冗談じゃないわ」リタが言った。「あなたはほかの男たちと同じように人間よ。傷付くことがあるわ。殺される可能性があるのよ」
「ほかの男たちと同じであってはならないんだ」
リタはしばらく彼を見ていた。
「驚いたわね」彼女が言った。「あなたであるのは、容易なことでないにちがいない」(「冷たい銃声」第35章より)
(2007/9/2更新)
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