| 野球で学んだこと
ヒデキ君に教わったこと
伊集院静
野球をほとんど知らなかった彼女にキャッチボールの手ほどきをしながら、女性のキャッチボールも美しいものだと思った。
その折、彼女が暴投を投げ、あわてて拾いに行こうとした。
「いいんだよ。キャッチボールは暴投が来ても捕球する人が拾いに行ってあげるもんなんだ」
「へぇー、野球ってやさしいんだね」
その言葉がとても印象的だった。(第二章「監督は野球を教えながら、人生を教えている」より)
親父は今月で72歳になるが、七十代の元野球少年たちと共に古稀リーグで元気に白球を追っている。捕手として甲子園に2度出場、大学時代は後のミスタータイガース故・村山実の豪球を受けていた。
私の息子も甲子園を夢見て、私の親父の母校へと進学し野球部に入った。残念なことに今は原因不明の背中痛と膝痛のため休部中だが、元阪神・田村勤氏の整骨院で治療と指導を受けながら、来春の復帰を目指して少しずつトレーニングに励んでいる。
この爺と孫の二人は、休日などによくキャッチボールをし、バッティングセンターで共に汗を流す。息子にせがまれ、私もたまの休みに相手をする。硬球の感触は懐かしく、掌の痛みも不思議に心地よい。私自身も子供の頃は、毎日の様に親父とキャッチボールをした。とりとめのない話だが、キャッチボールは心の対話なんだと、今さらながらに思う。
あれは奇妙な感覚だった。一人でボールを壁に投げ、返ってきたボールを拾い、また壁に投げる。原っぱで青空にボールを投げ、それをキャッチする。何度も同じことを一人っきりで続けていたのに寂しさはなかった。やがてキャッチボールの相手ができ、ゲームに加わるようになると、ますますベースボールに魅了された。(第五章「何もかもが挑戦だった」より)
(2007/10/17更新)
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