| 進化しすぎた脳
中高生と語る「大脳生理学」の最前線
池谷裕二
進化の教科書を読むと、環境に合わせて動物は進化してきた、と書いてあるけど、これはあくまでも体の話。脳に関しては、環境に適応する以上に進化してしまっていて、それゆえに、全能力は使いこなされていない、と僕は考えている。能力のリミッターは脳ではなく体というわけだ。・・・(中略)
でも僕は、あえて前向きに脳は過剰進化したと考えてみたいんだ。(第一章「人間は脳の力を使いこなせていない」より)
ニューヨーク留学中の中高生8人を相手に、脳科学界の若き精鋭が4回にわたって行った特別講義を書籍化したもの。冒頭に「高校生レベルの知識層に説明して伝えることができなければ、その人は科学を理解しているとは言えない」という物理学者ファインマンの言葉を引用しているが、まさにその自負通り、最先端の脳科学の知見や実績、研究成果を実に判りやすく、親しみやすくレクチャーしている。糸井サンとの対談書「海馬」もかなり面白く読めたが、今回は次代を担う中高生相手ということもあって、最新の成果を“伝えたい・判らせたい”という思いと情熱が、手書きの資料等からもより強く伝わってきた。
著者自身あとがきで、今回(2007年1月)のブルーバックスでの増補刊行(初版は04年10月朝日出版社)を前に再読して「なにかこう、よい講義を受けたような、そんな得した気分になりました」と自画自賛しているが、その言葉が嫌みにならないほど知的刺激に満ちた本。
意識とか心というのは多くの場合、言葉によって生まれている。意識や心は言語がつくり上げた幽霊、つまり抽象だ。こう考えると、ひとつの結論にたどり着く。そう、意識とか心は〈汎化〉の手助けをしているんだよ。わかるかな。
つまり、「言葉→心→汎化」だ。人に心がある〈理由〉はきっと言葉があるからだけど、人に心がある〈目的〉は汎化するためなんだろうね。(第三章「人間はあいまいな記憶しかもてない」より)
(2008/4/16更新)
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