| 訣別の海/スクール・デイズ
ロバート・B・パーカー
「俺は、一度彼に出くわしてないかな?」ジェッシイが言った。「パラダイスで何かの捜査をしているときに?」
「そうだと思うわ」リタが言った。
「彼と、恐ろしい黒人の男がいた」
「あなたは恐ろしいと言うかもしれないけど」リタが言った。「魅力的とも言えるわ」(訣別の海「53」より)
ジェッシイ・ストーンシリーズの5作目とスペンサーシリーズの33作目を立て続けに読破。長年にわたってパーカーの作品を訳してきた菊池光氏が2006年6月に亡くなられたため、訳者がそれぞれ山本博氏、加賀山卓朗氏に変わった。翻訳の巧拙次第で作品のイメージや世界観はがらりと変わってしまうため、長年続くシリーズを引き継ぐ訳者には、それなりに重圧がかかっていたものと察せられる。各書のあとがきにも「菊池さんの名訳の後を汚さなかったかだけが心配である」(山本)、「半可通なものまねは読者にも氏にも失礼になると考え、ここぞというところ以外は自分の流儀でいくことにした」(加賀山)と、各氏各様の思いが記されていたが、長年読み続けている私にしてみれば、どちらも違和感なく楽しむことができたので、正直ひと安心といったところ。
「救いが必要な人間は何千といる」私は言った。「おれは全員を救うことはできない。それどころか、救おうとした人間の半分も救えない」
「だから偶然にまかせるの?」リタは言った。「誰かに雇われるという偶然に」
「偶然と選択だ」私は言った。「すべてを引き受けるわけではない」
「どうやって決めるの?」リタは言った。
「さあ」私は言った。「これというものは、たいがい見ればわかる」(スクールデイズ「62」より)
(2008/4/19更新)
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