| 束縛/メランコリー・ベイビー
ロバート・B・パーカー著/奥村章子訳
「あんたが危ない目にあうのを黙って見てるわけにはいかないんだ。例の熊に頼んだらどうだ?」
「スパイクのことですか?」
「そうだ」
「自分の手には負えないってことをまだ認めたくないんです。これからもこの仕事を続けていくつもりなら、危ない目にあいそうだからといって、男の人に助けてもらってばかりいるわけにはいかないので」(束縛「52」より)
サニー・ランドルシリーズの第三作と第四作。正直なところ、マッチョな世界を書き続けてきたパーカーが女性探偵を主役に据えるってどうよ?と、本シリーズを敬遠していたファンも少なくないだろう(自分がそうだ)。そしてジェッシイ・ストーンシリーズ「秘められた貌」に登場したサニーに惹かれ、結果的に本シリーズにはまったという人も同数いるだろう(自分がそうだ)。マッチョなパーカーが描く“自立を目指す女性”が、どこまで現実世界で“自立した”女性達の共感を得られるのか疑問だが、強く賢くセクシーでありながら、葛藤しつつも己の限界点で周囲の男性の力に頼るサニーは、男の自尊心を満たす存在としては可愛く魅力的だ。
さらに、スペンサーシリーズで毎度情熱的に主人公と愛を交わしているスーザンが、サニーのかかりつけの精神医というクールな「表」の顔で登場しているのも、著者のファンにとっては心憎い人物配置である。
ドクター・シルヴァマンは、小さな診察券に曜日と時間を書き込んで差し出した。わたしはそれを受け取って、拳銃の入ったバッグにしまった。
「彼と離婚して五年になるんです」とわたしがいった。「その間、おたがいにほかの人と付き合ったこともあるんですよ。なのに、なぜこんなにつらいんですか?」
「その理由を一緒に探って行きましょう」ドクター・シルヴァマンはそういって立ち上がり、わたちを戸口へうながした。(メランコリー・ベイビー「5」より)
(2008/5/14更新)
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