| おそらくは夢を
ロバート・B・パーカー著/石田善彦訳
「この事件から手をひく気はないんだな、マーロウ?」
「これがわたしの仕事なんだ、警部。依頼人は、警察のやらないこと、あるいはやる気のないことをさせるためにわたしを雇う。このまま手をひくようなことをすれば、仕事はあがったりだ。わたしのセールス・ポイントは仕事にしがみつき、最後までやりとげることだ」(「11」より)
原題は「PERCHANCE TO DREAM」。パーカーが、敬愛するチャンドラーの処女長編「大いなる眠り」の続編として1991年に書き上げた、“パーカーによるフィリップ・マーロウ物語”である。その二年前にチャンドラーの遺稿を引き継ぐ形で「プードル・スプリングス物語」(1989)を完成させた著者であったが、世間の評価は思わしくなく(私もかつて読んだが印象に残っていない)、本人にとっても満足のいく作品とならず忸怩たる思いがあったのかも知れない。今回はプロローグに「大いなる眠り」のラストシーンを配するなど、随所に前作の名場面を挿入しながら、今度こそとばかりに“パーカーのマーロウ”をいきいきと活躍させている。こうした作品はえてしてオリジナルの熱心な“信者”からは非難と批判を以て迎えられがちだが、些細なあら探しに与せず素直に受け容れれば、少なくとも私はチャンドラーのマーロウと比べて特段違和感なく楽しむことができた。
「あなたはほんとうに嫌みな人ね、マーロウ」
「おれは私立探偵なんだ、奥さん。前にもいったように。遊びじゃない。これがおれの仕事なんだ。フランクリン街の薄汚いアパートメント、カフェンガ通りの狭苦しいオフィスに似合った人間だ。自分の流儀で金をつかい、なすべきことをして、侮辱されることを許さない。つまらない仕事だが、これがおれの仕事なんだ。あたえられた頭脳と度胸と筋肉をつかって、仕事をする。そして、金を稼ぐ」(「36」より)
(2008/5/17更新)
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