酒本舗

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五月の酒と本(十二)

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最近飲んだ酒 近頃読んだ本
正雪 天満月

正雪 天満月(静岡)
純米大吟醸
720ml/1838円


天を満たす月と書いて天満月(あまみつき:大阪は天満の飲み屋街で見上げる月・・・ではない)。35%精米した山田錦を麹米に、50%精米した岩手県産「吟ぎんが」を掛米に使用。上立ち香は地味だが、口に含むとバナナやマンゴーを思わせる南洋果実の風味が広がる。但し味わいそのものが甘い訳ではなく、どちらかと言えば苦味を含んだ辛口。後味もキレも上々。
神楽坂「MASUMASU」にて。この店の雰囲気で売値が正一合680円とはかなり良心的。肴は薩摩揚げ、酢もつ、牛すじと蓮根のきんぴら、海老のサンバルスープetc.。蔵元は南に駿河湾を望む由比町にある神沢川酒造場。「由比」の酒だから「正雪」か、なるほど・・・。

エクサバイト

エクサバイト
服部真澄

「心して聞いてほしい。歴史は、状況に応じて読み変えられてきた。そればかりではない。実際に、湖塗されてもきたんだ」
鹿島は、思いがけないことをいう。
「過去は作り出されようとすることがある」
「いくらなんでも、そんなことは・・・・・・」
(第一章「二〇二五年」より)


額に装着した超小型カメラで人々が自らの日常を録画する様になった近未来を舞台に、有名無名の人々が残すそれら大量の生涯映像を基に精緻な世界史を編み上げよう、というプロジェクトに渦巻く陰謀を描いたSF作。人間にとって、「記憶」の中の真実と「記録」に残る事実のどちらに意味があるのか、問いかけるテーマは意外に深い。
私達は、文章で残された史書が勝者によって都合良く糊塗されがちであると認識しているが、映像の記録に対しては往々にして脇が甘く、眼前で動く光景を鵜呑みにしがちだ。しかしデジタル加工技術の進化によって、たとえ動画であっても、何が事実で何がフェイクか判別できない時代が早晩訪れようとしている。
「記憶はきえる 記録はいきる」。本書を読み終えた後、眞木準氏が30年以上も昔に文具の広告で書いた有名なコピーをふと思い出した。消えゆく「記憶」にこそ「真」が在り、生かされた「記録」こそ実は「虚」に満ちている。そんな時代がいずれやって来るのだろうか。

「・・・忘れることで、人は生きてゆける場合もある。忘却は天から人類への、最大の贈り物かもしれないな。脳のなかで記憶を司る海馬とかいう部分は、不可思議な働きをするらしいから」
「ぼくだって、いつかオヤジみたいになるかもしれないんです。認知症は増えていて、誰が発病してもおかしくない。それに、母がいったんです。あなたのお父さんも、夢見がちな男だったわ・・・・・、と」
(第三章「二〇三一年」より)


(2008/5/30更新)

 
 
   

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