酒本舗

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六月の酒と本(八)

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香露

香露(熊本)
特別純米酒
500ml/880円


「香露」の蔵元・熊本酒造研究所は、酒造技術向上のため県内の生産者達が明治42年に設立。吟醸酒造りに欠かせない9号酵母はここで生まれている。
特別純米酒は平成18酒造年度から造られている新しい酒質で、阿蘇源流の清冽な伏流水を仕込水とし、原料米には山田錦、九州神力、レイホウを使用。上品でありながらもしっかりと力強く、コクと膨らみのある味わいを持つ。肴はボイルした帆立と子持ちやりいか。

天地人

天地人(上)(下)
火坂雅志

「敢えて、毒を飲むのです」
「毒?」
「武田と手を結ぶ。この難局を乗り切るには、それよりほかに手はありませぬ」
大胆というより、あまりに奇想天外な兼続の言葉に、さすがの景勝が顔色を変じた。
「武田と結ぶだと」
「はい」
「そなた、正気か」
(第六章「御館の乱」より)


「利」と「欲」が主な行動規範であった戦国の世に、「愛」を掲げ「義」を貫いた上杉家の重臣・直江兼続の一代記。世に言う「直江状」で家康に喧嘩を売った男として元々興味はあったが、兜の前立てに「愛」の一字を掲げていたとは、本書を読むまで寡聞にして知らなかった。謀略渦巻く戦国の世に愛だよ、愛。かつてサントリーが90年代に「愛だろ、愛っ。」というコピーを流行らせたが、それより遥か400年も前に斯くも大胆な個人用のキャッチフレーズを掲げた人物がいたとは驚きだ。
謙信が毘沙門天の「毘」を旗印に用いた様に、直江も愛染明王を信仰するが故に「愛」を掲げたに過ぎないとの説が有力だが、例え事実はそうであっても、兜に「愛」はなかなかなセンスだなぁと思う。09年NHK大河ドラマの原作で、直江の役は妻夫木クンが演じるとのこと。なるほど彼なら「愛」という字が似合いそうではある。

兼続と幸村は、それきり何も言わず、ただしずかに杯を重ねつづけた。言葉にはしなくても、酒を飲んでいるだけで、万言をつくす以上に心が通い合った。
ひとりは、愛という思想のために、あえて泥をかぶり、厳しい“生”の道を民とともに歩むことを選んだ男。
もうひとりは、みずから信じる義をつらぬき、清冽ではなやかな“死”の道へ突きすすもうとしている男。
(第二十一章「愛」より)


(2008/6/23更新)

 
 
   

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