| 殺意のコイン
ロバート・B・パーカー著/奥村章子訳
「すべてを賭けてもいいか?」
鼓動が速まって息が浅くなるのがわかった。喉を絞められたような息苦しさも覚えた。
レストランにいるほかの客にはなんの変化もなく、それまでどおりに食事をしたり酒を飲んだり、話をしながら嬉しそうな顔をしたり困ったような顔をしたりしている。けれども、わたしたちのテーブルだけは時間の流れが遅くなって、まわりの世界から孤立していた。(「23」より)
女性探偵「サニー・ランドルシリーズ」の最新作。ジェッシイ・ストーンとの関係はどうやら終わりを迎えた様で本作には登場しないが、五作目を迎えていよいよ著者も乗ってきた感があり、本筋のストーリー設定の面白さではシリーズ中ベストの出来だろう。
二十年前にボストンを震撼させた連続殺人鬼“物乞いキラー”が犯行を再開。かつて捜査責任者として指揮を執っていたサニーの父親フィルが顧問として捜査に参加することとなり、娘に協力を依頼するところから物語は始まる。自ら囮となって容疑者と接触するサニーの安全を気遣いつつ、警部時代の実力の片鱗をさりげなく感じさせる父親の人物造型が魅力的だ。
「降りるつもりはないのか?」と、父が訊いた。
「父さん、わたしはプロよ」
「わかってるよ。だから、おれの考えを押しつけずにたずねてるんじゃないか」
「降りるつもりはないわ。わたしは拳銃を持ってて、撃ち方も知ってるし、以前は警官をしていて、いまは私立探偵よ。危険だからって、家に帰って隠れてたんじゃ仕事にならないでしょ」(「26」より)
(2008/7/9更新)
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