酒本舗
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十一月の酒と本(五)

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最近飲んだ酒 近頃読んだ本
勝駒

勝駒(富山)
純米酒
720ml/1500円


故・池田満寿夫氏によって書かれたロゴが印象的。ラベルには「小さな手造り酒やですから年に、そう、こっぽり(沢山)とはできません」の一文が。五百万石を50%磨いた丁寧な造りから生まれるほのかな吟醸香。冷やして飲むと、さらりとした飲み口とふっくらとした旨みが際立つが、ぬる燗にしてもキレのよい辛口として楽しめる。料理に応じて冷温どちらでもハイレベルで楽しめるから、我が家の定番酒の一つとして入荷ごとに購入している。吟醸・大吟醸ももちろん旨いが、個人的には純米酒のコストパフォーマンスの良さが一番のお気に入り。

 

王莽

王莽
塚本青史

「『・・・この十二月一日をもって[始建国]の元年、一月一日とする。このようにして、天帝の威命を受けるものなり!』
王莽は朗々と自分が皇帝になる理由と、今後の施政方針を述べていた。冬の風が、長楽宮の回廊を吹き抜ける。細かい黄土が舞って、先の風景が霞んでいた。」
(第五章「居摂・始建国期」より)

中国史の中で、“しんちょう”と呼ばれる王朝は、秦朝、新朝、清朝の三つある。そのうち始皇帝を祖とする「秦」、日清戦争などで日本との関わりが深い「清」の二者は知っていても、前漢と後漢に挟まれた短命王朝「新」については知らない人が多いだろう。
でも実は、始皇帝の「秦」も王莽の「新」も、わずか15年の短命王朝という点では変わらないのである。ただ戦国の覇者として中国全土を統一した始皇帝と、偽善者を貫いて王位を簒奪しただけの王莽とでは、歴史的な存在意義は天と地ほども違う。
という訳で、元来あまり食指がそそられそうにない歴史人物ではあるが、登場人物の造形の巧みさと、息苦しくない程度に緻密な史実的描写が生み出す重厚感で、一気に読まされてしまった。
良い歴史小説に当たると、日常の瑣事を忘れて物語に没頭できる上に、少し賢くなれたような気がするのがうれしい。

「旋回した漢兵は血刀を振りかざして王莽に斬りかかってきた。
切っ先が王莽の頸動脈を断ち切る。
敵の皇帝が倒れたのに、漢兵は外れた印爾を拾っただけでその場を去ってしまった。
『予の首を、持って行かぬか!』
王莽の声は、もう喉から出なかった。」
(第六章「天鳳・地皇期」より)

(2003/11/26更新)
*塚本青史のその他の作品:「霍光」

 
       

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